アメリカ橋とアメリカ橋公園~遠い日の幻影

アメリカ橋公園
f:id:gaganbox:20191025161233j:image

恵比寿東口改札を出て、400mの長いスカイウォークに乗った。

降りると左手には、くすのき通りに面した

細長いアメリカ橋公園がある。名称はアメリカ橋に因んでいる。公園内には著名な照明デザイナーアメリカ国旗スターズ&ストライプスをイメージして設計した光のモニュメント「星のアンサンブル」が設置されている。

憩いの場所だが人影は殆んど無い。

 

アメリカ橋

f:id:gaganbox:20191025161324j:image

f:id:gaganbox:20191025161351j:imagef:id:gaganbox:20191025161413j:imagef:id:gaganbox:20191025161441j:imagef:id:gaganbox:20191025161503j:image

右手には恵比寿南橋、通称アメリカ橋がある。

青緑の鉄製跨架橋で橋下を山手線、埼京線湘南新宿ラインが走る。

1904年のセントルイス万国博覧会で展示されたものを1906年この地に運び設置したもので1970年に改築され今に至る。

 

この橋の袂に佇むと思い出す。

熱かった青春の一時をここで過ごした二人が

時を経て出逢い、その頃を懐かしみ、想い出を語り、また再び別れ行く切ない物語を。

「やるせない恋

       埋めた街

           角部屋の灯り」

詞は昭和の時代、各界の著名人が集った銀座の高級クラブ“姫”のオーナーだった山口洋子による。直木賞作家でもあった彼女がこの詞を書いたのは重い病を克服してからのことだという。年齢は60歳を超えていた。

熱く、儚い青春の想いを

凝縮させたような詞。

そして邂逅と戸惑い。

人はいつだって青春なのかもしれない。

 

自らの青春が重なる。

ずっと語り合った夕暮れの部屋

文学やら音楽やら哲学やら

若さに任せた愚かな饒舌に

あのひとは向き合ってくれた。

熱情とときめき、

恋と呼べるようなものだったのか?

伴に歩いた渋谷や表参道の街々、

ホテルのラウンジやレストラン、

美しく華やかだったあの人の顔が

瞼に浮かぶ。

部屋でよく歌を唄った。

フランス語やドイツ語で「ロマンス、パリの空の下、ローレライ」等々...

そして何よりもあの女(ひと)が好きだった、

ダミアの

「Tu ne sais pas aimer」

臈長けたあのひとをこの歌のように哀しませた男が居たのだろか。

 

「貴方は愛する術(すべ)を知らないのだ

   人の気も知らないで

   若い愚かな情熱、求めるのは快楽だけ」

 

この歌の詩のように、何も解らず、

若さに任せて突っ走ったあの頃、

あのひとの心を充たすことは出来なかった。

悲歎と煩悶、慟哭、打ち捨てられた恋。

色彩の消失、涙と絶望。

Lacrimosa”が天穹に谺する。

 

あのひとは今何処の空の下に...

もう決して逢うことはない

忘れ得ぬあのひと

adieu!...