永代通りと中央通りが交差する日本橋交差点。銀座線で日本橋駅を降りると東京日本橋タワーに直結する。エスカレーターを昇り地上に出るとタワーの1角に滋賀県のアンテナショップ「ここ滋賀」が在る.
3階建ての瀟洒なショップは2017年既にこの地に開業していたが、本年2022年4月営業主体の変更に伴いリニューアルされた。2階に日本橋を見ながら近江牛を堪能出来るレストランが出来たことを知り今回訪れた.
レストラン名は毛利志満といい近江八幡に本店がある有名店でフレンチ出身のオーナーがプロデュースしている.
「ここ滋賀」では京橋の名店「シェイノ」で研鑽を積み、表参道の一軒家レストラン「マノワール・ディノ」(2021年閉店)で長年料理長として腕をふるったシェフが料理を提供している.
ここ滋賀
レストランから日本橋を見る.
日本橋に架かる首都高速の撤去作業は既に始まっており、2040年には日本橋に空が戻って来る.
近江牛のランチは珈琲、デザート付で4250円とリーズナブルなコースだ.
デザートの梨は滋賀県産、バニラアイスも滋賀県の牧場で作られたもので、近江牛と供に実に美味しい.
淡い白橙色で統一されたソファーは店内を和やかに包み込む。美しい女性スタッフの丁寧で細やかな気配りにも好感が持てる.
こうした雰囲気のなかで日本橋交差点を見ながら近江牛を食するなどそうめったにはないことだ.
なおディナーは滋賀の食材と近江牛の
贅沢フレンチスコースで
極(ロース)14.000円
和(モモ)12.000円
1階には、これまた素敵なコンシェルジュが常在していて滋賀の名産品や見処を案内してくれる。
今回は紅葉の時期も近いのでTV画面に映された各紅葉の地を丁寧に解説して頂いた.
関東人は紅葉と云えばどうも京都の方に目が向いてしまうが滋賀県にも湖南三山、湖東三山、彦根城玄宮園等見事な紅葉を愛でる地が多数ある.
湖南湖東とは琵琶湖の南東であるが、琵琶湖そのものは東京23区をすっぽり飲み込んでしまう程巨大な湖である。
紅葉以外でも琵琶湖八景や勢田の夕照、堅田の落雁、三井の晩鐘等で知られる近江八景、伊吹山、忍者の里甲賀等見処満載である.
京の都に隣接するここ近江は信長と比叡山延暦寺、浅井朝倉の合戦、光秀の坂本、秀吉の長浜城等戦国時代、安土桃山時代を通して主な歴史の舞台となった國でもある.
若狹の小浜から京に至る約70km若狹街道(通称鯖街道)は幾ルートかあるが主たる街道の殆どが近江國を通る.この街道の往来により、京では鯖を始め新鮮な魚介類を味わうことが出来る.
嘗て信長も浅井朝倉連合軍壊滅のためこの若狹街道を疾駆したのである.
また日本橋を始め東京には日本橋高島屋、ワコール、日本生命、西武グループ等近江商人がルーツとなっている企業体が多数ある.
東京の各デパ地下にある和菓子たねや(ここはクラブハリエというバウムクーヘンも展開している)や叶匠壽庵も近江に本店がある和菓子屋である。
製薬メーカーも多い.首より上の薬の曰野薬品、メンタームの近江兄弟社、火を使わないもぐさのせんねん灸等々.
個人的には幸田露伴の小説「五重塔」にも思い入れがある.明暦の大火で消失した五重塔が再建されたのは1791年(寛政3)のことだった.露伴の小説はこの再建された五重塔に係わる物語であるが日本近代文学史上最高傑作の一つである.
上野戦争、関東大震災、東京空襲にも倒壊することなく、166年間谷中のランドマークであったが1957年(昭和32)心中放火事件で消失した.
この感動的な名作の舞台となった谷中感應寺五重塔も八田精兵衛(小説ではのっそり十兵衛)を棟梁とした近江國高島群の48名の大工によって再建されたものであった.
3階のテラスは解放されていて、日本橋の夜景を見ながら滋賀の銘酒「松の司」で舌づつみ、日本橋の秋風の微風のなかでぐびりと飲み干す酒の味、たまらんぜよ~.
#滋賀県アンテナショップ