至福の時

月2回 茜が来る

ビーナスの子がもたらす定期便

テレビを見ながら雑談する

入浴前にパルスオキシメータを測る

茜は常に99%である

「私は99%の女なの」と自ら言う

源次は95∼97%の間を揺れ動く

99%になったことは1度もない

 

確かめ合い、求め合う肌の温もり

3年の月日は短い

源次は「来年は死ぬのだ」と茜に伝えてある

「私が面倒みるから生きて」と茜は言う

「今年の夏は伊豆の下田に海を見に行こう、

東京から"特急踊り子号"で直通だから

其処でただぼんやり海を見るの」と茜

 

シャワーを浴びた後

珈琲とデザートを楽しむ

至福の時間

情容赦なく過ぎ行く時間

ドアの外 遠ざかる愛おしき靴の音(ね)

 

忍び寄る死の影

源次は死の誘いに抗えるだろうか

不可だ!抗えたところで後は無い

消えて行く一瞬    束の間の仕合わせ

交錯する久遠の時間と底無しの空虚

星の無い暗い空

小窓から見える高層ビルの斑な部屋の灯り

走り行く電車

存在の不確実性