ヤマサ醤油とシュードウリジンとmRNAワクチン

5’ -5’CAP - 5’UTR - SPIKE/RBD - 3’UTR - PolyAtail - 3’

 

修飾ウリジンmRNAワクチンは以上の構成成分から成る。

S蛋白質の遺伝情報以外にmRNAの分解を抑え、蛋白合成を促進する様々なものから構成されている。

5’Cap構造は5’末端の保護とリボソームを呼込む働きをもち翻訳開始に必須であり、蛋白質合成開始複合体の形成効率を上昇させる。

このキャップ構造は1975年当時国立遺伝研究所に在職されていた三浦謹一郎、古市泰宏両博士が蚕に寄生する細胞質多角体病ウィルスのmRNA研究により初めて発見し、その論文はネイチャー誌に掲載された。mRNAは1本鎖で活性を持ち、転写された前駆体mRNAの5´末端がリン酸3個を挟んで7-メチルグアノシンに結合している。

この5'-5'間結合が丁度Capping、蓋をするような形をしていることからキャップ構造と呼ばれる。やがてこのキャップ構造がウィルスのみでなく全ての真核細胞にも存在する重要な構造であることが認識されるようになった。

47年前の発見が、まさか今日のmRNAワクチンに応用されるとは思いもよらなかったと古市博士は述べておられる。

 

(尚インフルエンザウィルスはヒトRNAのキャップ構造を盗み取り、自らの蛋白質を作る。このことは真核生物のキャップ構造発見後知られるところとなったが創薬は困難であったようで、このキャップ構造を盗み取る酵素、キャップ依存性エンドヌクレアーゼの活性を阻害する薬であり、タミフル、イナビル、ラピアクタ等のノイラミニダーゼ阻害薬とは全く作用機序が異なるゾフルーザが塩野義製薬により製造販売されたのは2018年のことである)

 

間もなく承認されると思われる同社の3CLプロテアーゼ阻害薬である抗コロナウイルス薬に期待している。既に承認されている同効薬ファイザー社のパキロビットパックは効果はあるもののリトナビルがパックされているので併用禁忌が多く使いずらい。

塩野義製薬製剤は無症状から軽症中等症患者まで服用可能で、1日1回5日間投薬と誠に使い勝手の良い内服薬と考えられる。

 

UTR(untranslated region)は転写はされるが翻訳されない非翻訳領域で上流の5'と下流

3'にあり翻訳調整機能をもつ。

 

ポリA端末はmRNAの安定性を維持する。3´はポリアデニル化によりポリA(アデニン)鎖の付加が起こる。

 

Spike/Rbdはスパイク蛋白のReceptor binding domain(受容体結合領域)でこれがまさにウィルススパイク蛋白の遺伝情報をコードする領域である。

この遺伝情報はRNA塩基AGCUに従えば、通常のヌクレオシドはアデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジンであるがこのままの状態で体内に注入した場合は生体が免疫反応を起こし、Rbdは分解してしまい生体細胞内に到達せず又到達したとしても機能せず副反応も起こり易いということが知られていた。

 

2008年カタリン·カリコー(現ビオンテック上級副社長)、ドリュー・ワイスマン(現ペンシルベニア大学RNAイノベーション研究所所長)の両博士は4つのヌクレオシドの中でウリジンを修飾しPseudo(シュード、プソイド)化すれば生体内での免疫反応を逃れ、細胞に到達することを見出した。

Pseudoはギリシャ語のプサイΨに由来し、擬似・類似の意味を持つ。更にシュードウリジンをメチル化したN1メチルシュードウリジン(以後m1Ψ)が分解されにくく、持続性を保ち、より効果的な細胞内到達を可能にすることが明らかになった。

よってヌクレオシドはA(アデノシン)、C(シチジン)、G(グアノシン)、Y(ウリジンに代わりm1Ψ)で構成されている。

修飾ウリジンの発見、脂質ナノ粒子での封入、DDSでの運搬が今回のワクチン開発に多いに寄与した。

 

ヤマサ醤油は1645年(天保2年)に創業した、醤油造り370年を誇る銚子市にある老舗会社である。

1854年(安政元年)の時、偶々故郷和歌山県広村に帰っていた7代目は南海大地震に遭遇した。海水の干き方等の異常現象から大津波を予期し、村民に急を知らせるため田圃に積んであった稲束(稲むら)に火を投じ村民を避難させ命を救った。これはラフカディオ·ハーンの短編で紹介され、稲むらの火として嘗て小学校教科書にも載っていた。

 

後の医薬品開発のきっかけとなったのは、この会社が鰹節の旨味成分5'イノシン酸

椎茸の旨味成分5'グアニル酸を発見し、その工業化に成功したことにあった。

1970年に医薬品製造業の許可を取得し、翌年には原料製造を開始した。

特に核酸分野に於いては、供給能力、生産技術、品質ともにリーディングカンパニーであり、日本は素よりアジア、アメリカ、ヨーロッパへ輸出する等グローバルな展開をしている。

シュードウリジン或はm1Ψは既に40年以上前の1980年より海外へ試薬として輸出されていた。

今回、COVID-19ワクチンの承認を見越しての増産体制も整えられていた同社製剤は、

世界でも数少ない高品質のワクチン製剤原料として現在モデルナ社、ファイザー・ビオンテック社のいずれにも供給されている。

 

 

#mRNA構成成分 #ヤマサ醤油 #Cap構造

#シュードウリジン #コロナワクチン