コロナワクチン第1回接種を受けての身体的変化

 

〈接種ワクチン製剤〉

接種ワクチンはファイザー・ビオンテック社のコミナティ筋注製剤、有効成分はトジナメランで含量0.025mg,容量0.45mL製剤を日局生食注1.8mLに溶解したものを1回につき0.3mL筋注する。添加物としてPED❨ポリエチレングリコール❩、コレステロール、NaCl、KCl等を含む。2020年12月アメリFDAが緊急使用を許可し、日本では2021年2月に承認された。コミナティの意はCOVID19、mRNA、コミュニティ(community)、免疫(immunity)という用語を組み合わせたもの。

現在日本で承認されているCOVD19ワクチンはこのワクチンのみであるが、今月(5月末)にはモデルナ社のワクチンも承認される。これは今月から始まる東京、大阪で行われる大規模接種センターで使用される。使用量は1回0.5mLで希釈が不要であることと、ファイザー社製が解凍後5日間(溶解後は5時間)に対してモデルナ社は30日間の保存が可能なので接種者にとっては使い勝手が良いと思われる。

この記事を書いている途中、ファイザー社製のワクチンがヨーロッパにおいて解凍後2~8℃で1ヶ月間保存出来るようになったとの報道があった。

いずれもmRNAワクチンでSARS-CoV-2のスパイク蛋白質アミノ酸をコードするDNAを鋳型として転写したRNAを精製し、脂質成分と混合したもので、ウィルスS蛋白質を生体内で発現させ、それを免疫系が認識し抗体反応を起こしACE2受容体への結合を阻害する。

mはメッセンジャーの略で、伝令、伝達の意。mRNA蛋白質に翻訳する遺伝子の配列情報をコードし、これに従い蛋白質を作る。

RNAの開発自体は1990年代に遡るがmRNAは壊れやすく、作成には高度の技術が必要であった。この技術的難題及び副作用の壁のため多くの企業は製剤化を放棄せざるを得なかった。

2010年バイオテクノロジー企業であるモデルナやビオンテック社が設立され、mRNAに焦点を当てた技術開発が進められ、DDS(ドラッグデリバリーシステム)を応用、特殊な脂質ナノ粒子でmRNAカプセル化したことでヒト細胞内への移行を可能にし実用化に成功した。ヒトへの使用が許可されたのは2020年12月以降である。但し承認はされなかったものの2018年にはモデルナ社がmRNAワクチンをインフルエンザワクチンとして使用した治験がドイツで行われている。

 

これ迄日本で承認されているワクチン製剤は弱毒生ワクチン、不活化ワクチン又はトキソイド製剤であり、いずれも細菌或はウィルスを培養し製剤化したものであるが、今回のファイザー、モデルナ社の核酸ワクチンは培養を必要とせず、+鎖1本鎖SARS-CoV-2の感染源であるS(スパイク)蛋白質を設計する遺伝子領域の情報を元に人工的にS蛋白を合成させる核酸ワクチンであり、ワクチン史上初の画期的な製剤である。ワクチンmRNAはヒトの細胞内に入り、S蛋白質を作る。細胞内に入ったmRNAは1週間程度で分解し体内には留まらない。又核内に侵入ることはないので遺伝子に影響を与えることもない。mRNAが作り出したS蛋白は免疫系に記憶され、次に抗原が体内に侵入した場合、ヒトはこれを異物と認識し、T細胞やキラー細胞等免疫系が働き抗体を活性化させ感染の重症化を防ぐ。

 

アストラゼネカ社のワクチンはチンパンジーアデノウイルスベクター(運び屋)としたDNAワクチンであり、ヒト細胞内でRNAに変換されファイザー・モデルナ社製剤と

同様に作用を発揮する。J&J社のワクチンはヒトアデノウイルスベクターとして使用したDNAワクチン製剤である。2社製剤とも僅かではあるが血栓の副作用が報告されている。

概ねDNAワクチンよりmRNAワクチンの方が効果は高く、副反応も少ない傾向にある。

いずれのワクチンもどの程度効果が持続するか、或は次々と現れる変異株への対応が

可能かどうかは未だ不確定である。

日本では大阪大学と提携する創薬ベンチャーアンジェス社のDNAワクチンが先行しているようだがフェーズⅢが難航していると聞く。

 

 これら核酸ワクチンは従来型のワクチンとは異なり、遺伝子配列が解読できれば開発

スピードは速く、病原性を持たないので安全性も高く、変異株への対応も迅速に行えるので今後のワクチン製剤の主流になると考えられる。1796年イギリスのジェンナーが天然痘に牛痘を接種して以来225年、ワクチン製剤は画期的な変革を向かえた。尚この時の雌牛牛痘を意味するラテン語variolae.vaccinaeがワクチン(vaccine)の語源となっている。

 

〈ワクチン接種の理由〉

この史上初のワクチンが身体でどのように作用するのかに興味があったこと、SARS-CoV-2が以外にしぶとく様々な変異株を作りながら15ヶ月以上経ってもまだ感染が治まらないこと、日本の検疫体制が全く機能していないこと等が理由である。

2021年4月半ばインドで毎日20万人以上の新規感染者が報告され4月末には40万人に膨れ上がったにも拘らず日本政府が規制強化に乗出したのは5月に入ってからで、しかも、5/1には3日間の隔離、5/10に6日間の隔離、5/14になってやっと入国禁止措置となった。感染率がどうであれ感染者が多ければ国内へのインド変異株は自然に入って来る。規制される迄は定期便は飛んでおり、4000人以上がインドから入国していることから、インド株が国内に定着していると考えるのが普通であろう。増してインド株を特定するPCR検査は行われておらず、その内の300人と連絡不通の状態となっている。武漢ウィルス、イギリス株の時と同様水際対策は全く改善されておらず、国家としての危機意識がまるで無く、変異株は幾らでも入って来る。自己感染対策が基本ではあるもののこの検疫のだだ漏れ状況では自己の感染対策だけでは対応できない。

 

〈変異株の種類の一部〉

イギリス株はN501Yと呼ばれS蛋白1286アミノ酸残基の501番目のアミノ酸がN(アルギニン)からY(チロシン)に置き換わったものである。このようにたった1ヶ所のアミノ酸置換で感染力は1.5倍となる。

インド株はL452R(452番目のロイシンがアルギニンに置き換わったもの)、E484Q(484番目のグルタミン酸がグルタミンに置き換わったもの)で2つのアミノ酸が置換されている2重変異である。他に西ベンガルの3重変異株も確認されている。

 

〈現在の感染状況〉

ジョンズ・ホプキンス大学のデータによれば世界の感染者は現在1億6千万人を超え、

死者数は336万人に達する。日本では感染者70万人、死者1万1千人を超えている。筆者が昨年感染者に対する記事を書いた時(2020.7月)の世界の感染者は1400万人、死者数は60万人であった。10カ月の間に感染者は10倍以上、死者数は6倍近くになっている。感染者はほゞ全世界に拡がり、国内に於いても47都道府県全てに感染者が出ており、死亡者がゼロであるのは島根県1県のみである。まさに世界史上かって無い程の驚くべきウィルスである。しかも元来変異しやすいRNA遺伝子ウィルスであることからS蛋白を作る領域の遺伝子配列ACGUの配列変化により感染力及び毒性の強弱はあるもののS蛋白変異ウィルスは無限に出現し得るとも考えられる。

 

医療機関が多いにも拘らず日本で医療崩壊を起こしやすいのは、多くの民間医療機関がコロナ患者を診ないからである。中川という日本医師会会長は政府に苦言は呈するが、自らの医師会改革には一言も発しない。国民が生命の危機に曝されているとき、医師会代表として、自ら率先し、感染対策に手を挙げる医療機関を僅かでも増やし、この緊急事態を乗り切る一助となり、国民の生命を守ろうとする医師としての責務がその言動からは全く感じられない。

 

横浜市立大学の報告〉

横浜市立大学の報告によればワクチン2回目接種後の未感染の医療従事者105人に対して従来型ウィルス、その他7種の変異株ウィルスに対してファイザー社のワクチン接種後の効果を追跡したところ、従来型ウィルスでは1回目57%、2回目99%、その他の7種の変異株では1回目で16~55%であるが2回接種では全ての変異株で90~98%の高い有効率が示された。また既感染者6人に対して行ったところでは1回のワクチン接種で90%以上の中和抗体が獲得されていたと云う。この報告を見るとワクチンの2回接種により中和抗体が獲得されているので抑制効果は期待されるが、獲得された抗体の活性も十分に発揮されていることが望まれる。

 

〈接種前の準備〉

検温し、接種表、予診表、健康保険証を持参し、予診表には記入漏れが無いようにすること。

肩部を直ぐ出せる服装で行く事。

接種自体は数秒で終わり、痛みは殆ど無く、少なくとも皮下注よりは極めて少ない。

その後15~30分経過を診てショック、アナフィラキシー等の副反応がなければ終了。

 

〈接種後の身体的変化〉

11時に接種を受けたが接種直後から5~6時間は何ら反応は無かった。

5〜6時間を経て、微熱(筆者の平熱は36.2~3℃)、倦怠感があらわれた。17時36.7、18時36.7、19時36.5、20時36.3℃と3時間後に平熱に戻った。僅か0.3mLの薬液だが如何にも体内で免疫反応が起きていることが実感出来た。翌日も短時間ではあったものの同様の症状があらわれた。が翌々日にはそれ等の症状は全て消失した。但し2回接種後は比較的強い副反応があらわれるものと思われる。

 

以上がファイザー社コロナワクチンの第1回接種後の経緯である。