DNA→転写→mRNA→翻訳→蛋白質
はイギリスの分子生物学者クリックによって提唱された。
遺伝情報の流れを示したもので、あらゆる生物の中心教義である。一方向性で逆向きはない。
一部逆転写酵素をもつレトロウィルスでこれに従わないものもある。(ウィルスが生物かどうかは未だに確定していない)
又近年短い2本鎖RNAが特定のmRNAに作用し、mRNAの翻訳を制御するRNA干渉と云う現象が多数発現していることが見出だされている。
ヒト細胞核約10μm(1mmの100分の1)の中にはDNAがヒストン蛋白質に絡み付き23対46本の染色体を形成して存在している。その長さを合わせると2mに及ぶ。DNA2重らせん構造は逆向き相補的に対応している。必ずA-T、G-C結合であり、AとT、GとCの含量は等しい。従って一方が解ればもう一方は自ずと明らかになる。
PCR(Polymerase-Chain-Reaction)は加熱、冷却を繰返し、塩基間水素結合している僅かなDNA断片の2重鎖を解きプライマー、DNAポリメラーゼを加えDNAを何度か増幅させながら特定の遺伝子配列を確定する検査である。30サイクル繰返せば10億個を上回るコピーが出来る。
1本鎖コロナRNAウィルスの場合は逆転写酵素を使い一旦DNAにする工程が必要になるため、一般にはリアルRT(reseve-transcription逆転写酵素)-PCRの技術を用いる。現在ではリアルRT-PCR法を含めた全自動測定器が各社で発売されるなどSARS-CoV-2の拡がりによりPCR法は急速に発展した。
1983年アメリカの科学者キャリーマリスは夜の山道を彼女とドライブしていた。月明かりだけが頼りの危うい運転だったが何かしら閃きの予感がした。ホンダシビックのヘッドライトに照らし出されるアメリカ杉と曲がりくねった坂の道。暗闇の中で絡まったり解けたりする美しい2重らせんが脳裡に浮かぶ。
このDNA断片を増幅出来ないか?
世界があっと驚くPCRの発想に至った瞬間がここにあった。
この発想で1993年ノーベル化学賞を受賞した風変りな化学者キャリー·マリスはSARS
(severe-acute-respiratory-syndrome)CoV-2が世界を席捲する前の2019年8月に他界した。
ノーベル賞受賞当時PCRの発見に世界は衝撃を受けたが、その多くは科学者であり、新聞を賑わせたとしても、一般人がその名を口にすることは殆どなかったであろう。
それから27年後SARS-CoV-2のパンデミックによりPCRの名前だけは誰にでも知られるようになった。
博士が存命であったなら現状を見て果たして何を語るか、興味深いところであった。
蛋白質合成時アミノ酸の並べ方を指定するDNA部分はRNAポリメラーゼにより1本鎖に解かれつつ、この酵素は又DNA情報をmRNAに転写する役割を担う。この時解かれ1本鎖になった一方をセンス鎖(意味のある標準的、5'~3'方向)と呼び、鋳型になるもう一方をアンチセンス鎖(鋳型鎖3'~5'方向)という。
mRNAは鋳型になるアンチセンス鎖に相補的な塩基を紡いでゆくので、その配列はセンス鎖と同様の塩基配列5'~3'となる。但しこの時mRNAではT(チミン)はU(ウラシル)となる。
mRNAは蛋白合成に不要な部分を切取られたり、情報の終了部を規定される等の調整を受けながら次第に完成されて行く。調整後のmRNAは核孔膜から細胞質中に放出される。放出されたmRNAは蛋白質合成工場リボソーム及びrRNA複合体に結合し、アミノ酸合成を始める。この時mRNAの4つの塩基A(アデニン)C(シトシン)G(グアニン)U(ウラシル)の内の連続した3つの連なりが1つのアミノ酸を指定する。4つの塩基の3つの繋がり(コドン)は4×4×4=64通りとなるので、1つのアミノ酸に対して複数のコドンが存在する。
このコドンをアミノ酸に転換させるにはmRNAの情報をリボソームに運搬するt(トランスファー)RNAの働きが必須となる。tRNAはmRNAのコドンに対するアンチコドン領域を持つ。アミノアシル化酵素がこのアンチコドンを読み取り、それに相補的に対応するアミノ酸を結合させる(翻訳)。このtRNAがmRNAのコドンに対応するアミノ酸をリボソームに搬びアミノ酸を紡ぎ合わせ蛋白質を合成する。
例えばCTT、CTC、CTAはロイシン、TTT、TTCはフェニルアラニン、TAT、TACはチロシン等。
又蛋白合成を終了させる3つのコドンTAA、TGA、TAGを終始コドンと呼び、これによって蛋白質の合成は終了する。
細胞はアンチセンス鎖により相補的なセンス鎖を作り、アンチコドンにより相補的なコドンを作る。こうしてセントラルドグマにより生物は形造られる。
我々の行っていることの全ては
摂食→代謝→排泄という過程の中にある。
又1日のうちの1/3~1/4は仮死状態、即ち惰眠を貪っているのだが、それ以外の起きている時間の退屈を凌ぐため、学業に就いたり、職業に就いたり、或は遊興に耽ったり、性的戯れを為すことはあるものの基本的には上記の過程を死ぬまで繰り返す。
常に足許は崩れかけ立ち止まることは出来ない。生あるうちは死の恐怖に苛まれ安穏は無いのである。
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