フォンヴィレブランド病

フィンランドノルウェーに挟まれバルト海に続くボスニワ湾の入口にあるフィンランド自治領オーランド諸島は6500を超える島々から成り立つ。その中の一つの島の住民に

血小板数が正常であるにもかかわらず、鼻や歯肉、粘膜等の出血時間が延長するという不思議な病態があることを1926年医師フォンヴィレブランドが報告した。同一家系におこり

男女共に症状が出ることから遺伝的要因による疾患であることは想定されたが原因は不明であった。

その後この病態を呈する患者では第Ⅷ凝固

因子(血友病A欠乏因子)の活性も軽度(多くは関節内、筋肉内出血等血友病特有の出血症状は呈しない)ではあるが低下していることが認められた。

やがて先述のオーランドの島民においてもⅧ因子低下が確認された。

血小板数が正常であるにも係わらず、

出血時間が延長する、Ⅷ因子の低下がみられる、これ等の症状を呈する疾患を発見者の

名をとりフォンヴィレブランド病と名付けた。

血友病A患者の血漿をフォンヴィレブランド病患者に輸血すると凝集能が回復し、出血症状の改善がみられたことから何らかの形で

Ⅷ因子が係わっていることも示唆されたが、

なぜ血小板が機能しないかも含め、これ等のことが明確になるには血漿蛋白分画法の

技術的な発展を待たなければならなかった。