東京三大豆大福

豆大福なぞ滅多に食べることはない。

どのみちそう代わりばえしないものだと思っていたからだが、東京三大鯛焼き屋があるように東京三大豆大福屋があるのだということは知っていた。泉岳寺にある松島屋、護国寺近くの郡林堂、原宿の瑞穂の三店である。

このうち原宿瑞穂はこし餡なので却下した。ある人から「松島屋と群林堂とどちらも並んで買って食べたが松島屋の方が断然旨い」と聞いたので、それを買ってみようと思い立った。どうも脳というものはそんな気紛れに支配され易いのか、その豆大福を買うまでは"豆大福松島屋"という続け様の囁きが聞こえて来て仕方がない。

松島屋の創業は大正7年(1918)で宮さまの邸宅があった近くに店を構え昔乍の味で今に至って居ると云う。店売りの他に日本橋三越銀座三越日本橋高島屋新宿高島屋、池袋東武等で販売している。各店デパートのバイヤーが松島屋迄出向いて100~200個と買い求め各曜日毎に其々のデパートで限定販売している。例えば池袋東武デパートでは土曜日12時頃から販売開始し1人5個迄で売り切れ次第終了となる。松島屋以外の他2店はデパート等始め他所で販売する事はない。

松島屋の場合は都合の良い日にデパートへ出掛けて買っても良いのだが…

となると他に食べたい吉備大福、みたらし団子を手に入れることが出来なくなるので結局店に行くということにした。

 

JRではゲートウェイ駅、都営浅草線では泉岳寺駅都営三田線では白金高輪駅が最寄り駅となる。只3つの駅いずれからかも7~10分程度掛かるので遠い。特にゲートウェイ駅、泉岳寺駅からは急勾配の伊皿子坂を登るので

きつい。

白金高輪からだと坂を登らなくて済むのだが迷うのも嫌なので詳しく道順を調べているうち、JR品川駅港南口から出発する、品川区運営の「ちぃばす」に乗り高輪1丁目で降りれば松島屋は目と鼻の先であることを知った。故にそれに乗って行くことにした。交通事情もあるが通常は10分程で到着する。バスを降りると赤と白の縦縞模様のテントの店がまさに目の前にあった。開店時間の9時半頃であったが案の定既に行列は出来ていた。店は狭く客は2人しか入れない。30分程並んで豆大福、吉備大福、みたらし団子を買った。

品川駅港南口ちぃばす乗り場
f:id:gaganbox:20220513224336j:image
f:id:gaganbox:20220513224349j:image
松島屋店頭
f:id:gaganbox:20220513224245j:imagef:id:gaganbox:20220513224303j:image

吉備大福と豆大福各1個190円
f:id:gaganbox:20220514215147j:image
みたらし団子1本160円

f:id:gaganbox:20220514215128j:image

帰りは下り坂なので伊皿子坂を歩きJRゲートウェイ駅から山手線に乗った。

 

近くに泉岳寺はあったが私は忠臣蔵には興味が無いので寄らずに帰った。

忠臣蔵に関して私が思い起こすのは芥川龍之介の短編「或日の大石内蔵助」という作品である。仇討ちが成り細川家預かりとなっていた赤穂浪士の面々が江戸中に仇討ちが流行っていることや、頻りに内蔵助を褒め称えることに対して、全く違った感情を抱く内蔵助の複雑な胸中を芥川が見事に読み取ったかのような珠玉の短編である。以下はその最後の文章である。

「冴え返る心の底へしみ透って来る寂しさは、この云いようのない寂しさは、一体どこから来るのであろう」

内蔵助は、青空に象嵌をしたような、堅く冷い花を仰ぎながら、いつまでもじっと彳(たたず)んでいた。

 

 

JRゲートウェイ駅から品川駅までの縦に繋がる街づくりが進行中の品川開発プロジェクト
f:id:gaganbox:20220527232953j:imagef:id:gaganbox:20220527233027j:imagef:id:gaganbox:20220527233155j:image

 

 

ニューオータニに「さつき」という店がある。

私はここのスーパーエクセレントだか、エクセレントスーパーだったか、そういった名の付くケーキを数回食べたことがある。

所謂ショートケーキの大きさで1個(1ピース)3000~4000円以上する。厳選された素材のみで作られるケーキなのだが値段が値段だけに旨いのは当たり前という思い込みもあったからか食べて感動したということもなかった。

ところが松島屋の190円の豆大福を頬張ってみると「アァ~これは旨いなあー」と思わず感動してしまった。一緒に買った吉備大福も実に旨い。ニューオータニの高級ケーキと較べるのもどうかと思うが高級ケーキで味わえなかった感動を190円の豆大福で得たのも不思議な気がする。

 

後日有楽町線護国寺駅で降りて、3店のうちの1つである群林堂の豆大福も買ってみた。此方も大正5年(1916)創業の老舗である。音羽の改札に向かい講談社への出口方面へ出ると講談社の反対側に店が見える。店は護国寺から江戸川公園に続く音羽通りにある。住所は文京区音羽町群林堂の並びには光文社、裏手には御茶ノ水女子大学や筑波大学附属高校が、反対側には日本女子大学講談社と在りまさしく文京区だ。

買った日は余り並んで居なかったが、ここもほぼ毎日行列が出来るようだ。松島屋、群林堂とも100年以上変わらぬ味で営業を続けている。


f:id:gaganbox:20220525230115j:imagef:id:gaganbox:20220525230130j:image

鹿子と豆大福
f:id:gaganbox:20220525225822j:image

みたらし団子
f:id:gaganbox:20220525225837j:image

光文社
f:id:gaganbox:20220525225916j:image

講談社

f:id:gaganbox:20220525230022j:imagef:id:gaganbox:20220525230057j:image

個々の好みはあると思うが筆者は松島屋の方が好みである。

東京はあちこちで開発プロジェクトが進行中のエネルギッシュな街であり、江戸から昭和にかけての懐かしい佇まいが至る処で見られるノスタルジックな街であり、相変わらず行列をしてまで買おうとする100年以上続く小さな大福屋が存在する街でもある。

 

以上東京豆大福顛末記でした。

 

#東京三大豆大福 #松島屋 #群林堂