地球は回る,留吉は眼が回る!?人間自動消滅装置

留吉は格別死を慴れているわけではないのだが、いつ訪れるかわからない死に関して考えると不安になる。

時折、眩暈とまでは謂えないがスーと意識が遠のく感じがする。何やら脳から水分が蒸発し、血流が途絶えるような感覚とでもいおうか。得たいの知れない何物かが、浸々と細胞を蝕み始めているかのようだ。

背中から異様に汗が出て、軀の芯が暑い。しかし熱は36.5℃を超えたことがない。熱感があるのでシャツを脱ぐ。が暫くすると悪寒がしてくるので、再びシャツを着てカーディガンを羽織る。脳がいかれているため温熱中枢が正常な機能を呈しなくなっているのだろう、己の軀でありながら己のものではないような妙な気がする。

これ程頭がぼんやりしているのに明日の朝は果たして目覚めるのだろうか。生きていれば死ぬのは当たり前の話ではあるが、どうもそこの処の気持の調整が儘ならない。

 

地球は反時計周りで自転、公転している。

その速さは自転で秒速約460m、公転で秒速30.000mであり、時速にすればそれぞれ1670km、11万kmになる。(参:新幹線時速は約280㎞、ジェット旅客機は時速1000km)

地球の中心部である外核内核の境界線の温度は太陽表面と同じ約6000℃ある。厚い固形のマントル層に覆われているが、そのマントルを通過した内部の地下熱は至るところでマグマとなって地表に噴き出している。

我々は超高温の熱を内部に抱え、超高速で回転する球形の表面に必死にこびりついている偶然発生した黴に等しい。雨が降れば流され、風が吹けば飛ばされる。ほんの一瞬の有るか無きかのことだ…

と考えれば死ぬこと意外に何処に安心·安全があるというのか?

 

人類は地球を飛び出し、38万km彼方の月に到着したと云われている(月での映像が本物かどうか疑念に思っている人も居るらしい)、また今日では、その軌道によって変わるが約7500万km彼方にある火星への居住を目指している。

1997年に打ち上げられた土星探査機カッシーニは惑星の重力を利用したスィング·バイにより7年の歳月を経て、土星の軌道に乗った。地球からの距離は14億数千㎞ある。カッシーニから放たれたホイヘンス·プローブは土星最大の衛星タイタンに着陸した。

ホイヘンスカッシーニを経由してタイタンの探査データを地球に送信し、カッシーニ自体は土星上空からタイタンやエンケラドスや土星の輪を撮影、13年間土星を周回し撮影した映像を地球に送信し続けた。カッシーニは自らの撮影で得た知識により、タイタンに川や湖や山があり、エンケラドスの厚い氷の層から噴出すガスの存在を知り、そこに生命体の存在、或は今後生命体が発生する可能性が有ること知った。

20年間の旅を終えることになったカッシーニは自らの機体が齎らすことを否定し得ない地球微生物の付着によるタイタンやエンケラドスへの機体破片の落下、またそれによる地球微生物の汚染を避けるため、それらへの衝突を回避しなければならなかった。そのことは即ちタイタンの重力を利用し、土星に突入すると云うことに他ならない。

カッシーニは地球にアンテナを向けながら最後の力を振り絞り土星の大気圏に突入した。熱に融かされた探査機は土星の大気をつんざき、流星となって鮮やかな耀(ひかり)を発して燃え尽きた。ヒトが作ったモノの方がヒトより遥に仁義礼に叶っているではないか。

 

(ジョヴンニ·カッシーニは17世紀のイタリアの天文学者で、後にフランスに帰化した。クリスチアーン·ホイヘンスは17世紀のオランダの天文学者で、いずれも土星の衛星の発見、輪の観測を行っている。探査機の名は彼等に因んで付けられた)

 

億万kmの彼方に飛び出す一方地球内部へは、未だ精々10km迄しか掘削出来ていない。幾つかの層で成り立っていること以外内部に関しては何も解ってないに等しい。宇宙で採取した物質の分析により、或は地下の掘削により数十年か後に何某か得られるものがあるのかも知れない。併し地球の運命は変えられないだろう。要するに決定的な何事をも解らないうちに人類は消滅するだろう。

 

〈留吉の夢想〉

肉体の完全自動焼却施設のようなものが有ればいい。AI(Artficial.Intelligense)による全自動管理システムで、最初の部屋に入ると「授かった命です、大切にしましょう」「もう少し考えてみませんか」等の警告文がある。コーヒーでも飲んでゆっくりし、それ等の標語を見て考え直した人は、その部屋を出ればよい。この部屋の出入りは自由で、出た場合は何も無かったことになる。もっとも監視カメラ位は必要かもしれない。

考えが変わらなければ次の部屋に行く。この部屋に入ると浮世へは戻れず、いよいよ三途の川を渡ることになる。何でもいいのだが、例えば駅の改札口の様なもので、マイナンバーカードをタッチするか、差し込めば、(この場合は二度とカードが戻らぬよう差し込んだ方が良いだろう)本人確認が行われる。

本人確認が済み、一定の施設使用料金を支払えばゲートが開き入室出来る。カードは没収されると同時に公的機関へも情報は伝達されるので死亡届けもそれをもって完了する。

年金、公的保険、税金は全てストップされる。金融機関へも通知され、現金の預入、払戻も停止される。

財産や、相続人が少なければ余り問題とならないが、相続人が多かったり、隠し子等が居ると厄介なので、このような後々問題になりそうなことは、健康なうちに成るべく処理しておくことが望ましい。

 

後は椅子に座りシートベルトで固定する。そこで自動的に体重も測定される。

AIアームロボットが体重を元に充分な致死量の例えば麻酔薬等を注入する。同様にAIロボットにより瞳孔、呼吸停止、心停止などで死が確認出来れば焼却作業に入る。現行法では24時間経なければ焼却することが不可能になっている。それでも良いだろうが、ここは無駄な時間を省くためAI規定を適応し、意識がなければ特に時間を問題視しないこととし焼却作業を進める。

骨まで溶解出来れば、納骨作業もなく、ゴミも出ない。墓も造る必要がない。

有史以来紛争は絶えることが無いので、AIはヒトが空想した、尊厳やヒューマニズムや博愛等の浅ましい概念は切捨てるべくディープラーニングされているだろう。

 

薬剤の搬入や授受に僅に人的資源が必要となるかもしれないが、このような施設があれば安心する。他人へ迷惑を掛けることも必要最小限にとどまると考えられる。

人間社会の様々な業務はAIがヒトに取って替わり行い、社会の歯車は滞りなく廻って行く。もはや、ここではヒトが作った法律や憲法国際法等は通用しない。AIの規定が絶対的なものとなる。AIの、AIによる、AIのための統治。こうしてヒトは不要になる。

 

至るところで安心·安全と声高に叫ばれるが、それならば、何時でも、何処でも、誰でも、自由に立入れる上記のような、究極の安心·安全な死ぬ施設を一刻も早く造って欲しい。

このような安心·安全な施設が出来さえすれば、我々は心置きなく何事にも立ち向かえ、

愚昧で退屈で没個性的で、陳腐で、同調圧力に満ちた、希望に耀く、想像力豊かな、SDGsな明るい未来への展望が開けるのではないか。

 

と聊か不見識の謗りを免れないようなことを書いたが、あくまでも留吉の夢想であり、ならず者の戯れ言に過ぎないと捉えて頂ければよろしいかと…

 

 

#地球の自転と公転#地球の構造

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#カッシーニホイヘンス