寂しいネオン街

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この路地裏のネオン街を通り抜けるとスーパーマーケットやドラッグストアの在る大きな通りに出る。私は退社後屡々その通り沿いの店で食料品や日用品を買い求め、再びこのネオン街を歩き、仄暗い善光寺の坂を登り帰宅するのである。

このうら寂しい、どことなく艶めいたネオン街の空気を私は気に入っているのだが、マルセイユコルドバマラケシュ或いはアンカレッジやサンクトペテルブルクでも空気の成分は変わらないものだと想うと何やら不思議な気がしないでもない。

 

空気の成分の大部分が窒素と酸素から成ることは18世紀フランスの化学者アントワーヌ・ラヴォアジェによって示されていたが、空気の成分中には未だ明らかにされていない謎の微量元素が含まれていることも知られていた。

19世紀後半その謎の成分が発見される。

ギリシャ語で a(~しない)+ ergon(仕事、

働く)=働かない、怠惰なの意の通り不活性なガスであったその物質(気体)はargonと称せられた。アルゴンは空気中に0.93%含まれ、窒素78%、酸素20%の次に多く、二酸化炭素0.03%の約30倍存在する。融点、沸点はそれぞれ-189.35、-185.85℃であり極めて安定した元素で、放電管に充填し、放電させるとライラックの光を放つ。

その後アルゴンと似たような性質を持つ、

クリプトン、ネオン、キセノンが次々と発見されてゆく。既にメンデレーエフの周期律表は発表されていたが、新たに発見された、

これ等の不活性ガス(inert gas)又は希ガス(rare gas)と呼ばれる元素類を追加するため

周期律表はヘリウムを初めとして右側に1列増やされることになる。

(スイヘイリーベボクノフネ〰️🎵)

これ等の元素(ヘリウムを除く)は最外殻電子を最大収容数の8個を有しているため安定しており(オクテット則)、反応性は極めて低く価電子は0である。

 

現在18属に位置するこれ等元素にも反応性のあるものも含まれることが解り、また必ずしも稀な存在とも云えず、不活化ガスや希ガスという表現も元素の科学的な分離が困難であった頃の名残であり、正確な性質をあらわしているとは云えないことから、今日ではこれ等18属元素の名称に関してはIUPAC(国際純正応用化学連合)の勧告により貴ガス(noble gas)という表記の提案がなされている。

 

ネオンの名はギリシャ語で新しいを意味するneosに由来し、融点-248.7、沸点-246.0℃と、これまたアルゴン同様極めて安定性が高く、無色無臭の気体である。このガスを放電管に封入し放電すると赤橙色に輝く。

ネオンはパリの政府庁舎で公開実験された後、新たな照明器具として1915年設立された会社クロード・ネオン社よりヨーロッパ、アメリカでの販売が開始される。

 

ネオン照明は貴ガスの混合物で構成されており、現在もよく使用されているが、青色発光ダイオードの開発後、フルカラーが可能となったLEDに次第に取って変わられつつあるようだ。

 

LED(Light.Emitting.Diode 発光する電子素子)は1960年代に赤色が、70年代に黄緑色が発明されたが、青色の開発には30年を要し、天野浩が窒化ガリウム(GaN)からそれを得たのは1989年であった。

5年後の1994年中村修二が高輝度青色発光ダイオードの開発に成功し、その後純緑色も開発され、赤、緑、青(RGB)の光の三原色が完成された。これによりLEDは白色光やフルカラー発色を可能とし、初めて現実的な照明装置となった。

2014年赤崎勇、天野浩、中村修二の3氏は

青色発光ダイオードの開発によりノーベル物理学賞を受賞した。

スカイツリータワーはこの年、RGBとその

“等混合”である白色の輝きで3氏の受賞を祝福

した。

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様々な発見や発明で、人類世界は進化しているのだろうか。或いは進化そのものが所詮

破滅への道筋であるに過ぎないのだろうか。

いずれは到来するであろうシンギュラリティにより、多くの業務はAIが行い、ベーシック・インカムで生活を保証される人間以外は、自律型致死兵器システム(LAWS)の一種、AI搭載自動殺人歩哨ロボットにより次々に殺戮されてゆくのかも知れない。このロボットは5.56mm機関銃と40mmグレネードランチャーを備え、赤外線センサーで人間の体温を感知し、24時間不眠不休で3.2km先の標的を確実に仕留めることが出来るという。

 

「我々が倫理とか道徳とか呼んでいるものは

世界の秩序に反する我々の同胞の絶望的な企てにすぎないので、世界の秩序は闘争と殺戮と、互いに相反する力の盲目的な相剋なのである。自然は自らを破壊している。

考えれば考えるほど、世界は狂犬のようなものだと思わずにはいられない」

「人生はいかにも味気ないものなので何は

ともあれ気を紛らわさなければならない」

アナトール・フランス  “神々は渇く”

大塚幸男訳より

 

このような埒も無い事を考えながら夜のいざないに紛れ込む。

味気ない人生を仮にでも充たすべく。

夢遊病者の夜はいつまで続くのやら。