虫けら

Xはこれ迄、季節の事など考えもせず、

灰色の泥の中で虫けらのように蠢き、

一条の光芒すら見ずに育った。

あらゆる感情を捨て、機械的な微かな呼吸

のみを繰り返す日々。

生活の一切は恥辱であり絶望が唯一の友

であった。

なぜ朝目覚めるのだ。一日がまた始まる

事への恐怖。何千日、何万日と続く

立ち止まることが出来ない絶望の日々の

連続。一瞬一瞬は崩れ去り、時間だけが

通り過ぎ、空虚が全てを支配する。

不手際な人生に付きものの矮小な精神と

脆弱な肉体。

狂気も錯乱も無い人生に何の意味がある。

ひたすら耐え忍び生きながらえ、

知らぬ間に闇に消え去るだけだ。

舗道に倒れ込み、頬杖を突きながら考える

取り留めもない思考の連続を。