盆帰りした青年に、帰る場所は無く、
会う人もいない。冷たい世間には慣れっこ
だったが祭の屋台や浴衣姿の人々を青年は
好んだ。逞しい筋肉を持て余した彼は
鬱陶しい夏の暮れ方、喧騒の街へと歩を
進めた。
懊悩と不安、恐怖と倦怠。
あぁなんという地獄だ。女達の嬌声と嘲笑。
子供等の能面のように冷然とした顔と
射る様な眼差し。
青年は世間を振り返った。
希望など持ってはならぬ。
何処に仕合わせがあるというのだ。
広袤の中に朧気な影が見えるだけだ。
得心した青年は非情な掟に縛られた街を
通り抜け、夜の公園に寝転んだ。
こうして、一夏一夏が不確かな青春を蝕んで行く。
夏はいつ終わるのか?